ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進
基本的な考え方
artienceグループは、サステナビリティ憲章の「サプライチェーン全域での人権と多様性の尊重」に基づき、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を企業として取り組むべき重要な課題の一つとしています。性別や国籍、年齢、障がいの有無に関わらず多様な価値観・考え・発想を尊重するよう努め、やりがいを持って働くことのできる職場づくりを目指しています。
「人間尊重の経営」をCorporate Philosophy(経営哲学)に掲げるartienceグループ(以下、「当社グループ」という)にとって、人材は最も重要な資本であり、社員一人ひとりが能力を存分に発揮する環境を整え、組織の成果を最大化することは、当社グループの持続的成長に不可欠です。
社員は一人ひとりが異なる特徴や個性、バックグラウンドを持った多様な存在であり、それぞれの考え・想いをもって職務を遂行しています。社員の「目に見える外見的な特徴」だけでなく「目に見えない内面的な特徴」についても互いに認識し、共に学びを深めていくことで、当社グループのさらなる企業価値向上に資するDE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)を実践します。
artienceグループが考えるDE&I
- ダイバーシティ(Diversity;多様性)
ダイバーシティとは、さまざまな人たちが集まって、一つのチームとして共存している状態のことです。ダイバーシティは、イノベーションを創出し組織を成長させる素地となり、組織の持続可能性を高めると考えます。 - エクイティ(Equity;公平性)
エクイティとは、すべてのメンバーが業務活動に必要な情報やツール、コミュニケーション手段に確実にアクセスでき、等しくメリットやチャンスを受け取れる状態のことです。社会に存在する不公平な構造を認識し、メンバーそれぞれの「違い」や状況に配慮して対応を多様化することが、組織の公平性を担保します。 - インクルージョン(Inclusion;包摂性)
インクルージョンとは、心理的安全性の高いチームの中でメンバーの誰もが安心感と自信を持ち、互いに受け入れられている状態のことです。そのような環境で個人の能力が最大限発揮されることにより、組織の力は最大化・相乗化されます。
DE&I推進において取り組むべき課題
(1) 経営戦略への組み込み
経営トップのコミットメントのもと、DE&Iに関する目標(KPI)を設定し、その実現に必要なロードマップを策定します。KPI・ロードマップは、当社グループの経営戦略として実行と見直しを進めます。
(2) 全社DE&I推進体制の構築・運用
取締役会を監督者とし、経営トップのコミットメントに立脚する、グループ全社をカバーするDE&I推進体制を構築し、実務組織やグループ各社と連携して取り組みます。また、この体制を継続的に改革し、実効性の向上に努めます。
(3) ガバナンス改革によるDE&I経営の強化
取締役会の経営監督機能を高めるため、取締役会の構成員のジェンダー、国籍、バックグラウンド、専門性などに関して必要充分な多様化が確保されているかを検証します。
(4) 多様な人材と働き方に向けた制度改革
社員の誰もが自身の特徴や個性、バックグランドに制限されず、自身の能力を活かして活躍できるように、人事制度を継続的に改革します。多様な社員の生産性・創造性を最大化するため、多様な働き方の実現に取り組みます。
(5) 行動・意識改革に向けた教育・育成
当社グループ内のあらゆる組織においてDE&Iを定着させるため、社員の各階層に応じた研修やワークショップを反復的に実施します。
(6) ステークホルダーコミュニケーション
当社グループの求める多様な人材に的確に訴求するため、発信と対話を効果的に実施します。またDE&I経営の取り組みを投資家層に発信し、企業価値向上に寄与します。
本方針の適用範囲について
本方針は、当社グループを構成するすべての会社およびすべての組織に適用されます。同時に、当社グループの役員、顧問、社員、契約社員、パートタイマー、派遣社員ほか当社グループの業務に従事するすべての人(総称して「役職員等」という)に対しても適用されます。
本方針の改廃および管理について
当社グループは、適用される法令等の改正や社会環境の変化に伴い、本方針を適宜改定します。
また、本方針の改廃事務等を行う所轄部署は、artience株式会社のDE&I活動を統括する部門とします。
2024年8月1日 制定(2024年7月24日サステナビリティ委員会にて承認)
推進体制
artience(株)グループ人事部を主体とした活動から、2021年9月の部門横断メンバーからなるダイバーシティ推進プロジェクトを経て、2023年1月、グループ人事部の直下にD&I推進室を新設しました。さらに2024年1月には、組織の名称をDE&I推進室と改め、よりエクイティの観点を強調し活動しています。DE&Iの本質とは構造的差別をなくすことにあると考え、一律ではない個々に必要なサポートを通し、多様な社員の活躍につながる制度・仕組みの検討、教育研修の企画・実施、社内外への情報発信と風土の醸成を推進します。
また、拠点に適した推進方法の検討・実施と推進活動(推進月間)を行うDE&I推進委員と、アライ(ALLY)に賛同したアライ(ALLY)メンバーがDE&I推進室と連携しながら活動しています。
取り組み
女性の活躍推進
前中期経営計画SIC-Ⅱにおいて女性管理職比率(国内)を2020年度の4%から、2024年1月に8%とする目標を設定し取り組みを進めてきました。2024年1月の時点で女性管理職比率(国内)は5.5%です。
2023年は3月8日の国際女性デーに合わせ、当社で活躍する女性社員にインタビューを行いました。これまでのキャリアや女性活躍推進が進む中で感じる変化、これからキャリアを築く女性へのメッセージなどをインタビューし、電子社内報などでグローバルに公開しました。
8月には本社勤務の若手の女性社員を対象として、女性取締役である安達知子氏とのランチミーティングを開催しました。当日は女性活躍推進の活動状況の共有を行い、女性社員自身が今後キャリアを築いていく上で感じている不安や障壁になっていることなど、ざっくばらんに意見交換を行いました。
9月には当社グループにおける女性の健康に関するヘルスリテラシーの向上に向けて、役員・部門長を対象としたセミナー「更年期と更年期障害への理解、女性の活躍支援のために」を行いました。愛育病院名誉院長である安達取締役に登壇いただき、医学的な観点から講演いただきました。女性社員からは「自身が迎えるであろう更年期に対して医学的な理解が深まった」、男性社員からも「職場や自身の家庭でも役に立つ知識でより多くの人に聞いてもらいたい」などの意見がありました。
また、2022年度より組織階層におけるチーム制度を導入しています。小さい単位での早期マネジメント機会を創出することで、グループ全体のマネジメント力強化を図っていきます。
女性活躍推進に向けた「行動計画の策定」
- 女性採用比率を30%以上とする
- 年次有給休暇取得率を60%以上とする
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
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新卒女性採用比率(国内)※1(%) | 30 | 32 | 32 | 33 | 37 |
女性管理職比率(国内)※2(%) | 3.6 | 3.9 | 4.5 | 4.5 | 5.5 |
- ※1 各年度4月入社の新卒女性採用比率
- ※2 各年度翌年1月時点
「えるぼし」認定を受けています
男女賃金格差に関する取り組み
当社グループ(国内)※では、従事する役割(職務)に応じた賃金制度を適用しており、同一役割における性差による処遇差はありませんが、統計分析の手法を用いて年齢・学歴・勤続年数の影響を排除したうえで男女の賃金の差異を計算したところ、管理職社員については統計的に有意な差異は認められませんでしたが、非管理職(一般社員)については85.6%という差異が確認されました。これらの状況を踏まえ、差異となっている要因の分析も行い、各種施策を進めています。
- 連結および非連結子会社が対象範囲
- 男性育休セミナーの開催
ダイバーシティ教育・啓発活動
2023年度は、D&I推進室発足初年度として推進室のメンバーが国内の各拠点を訪問し、当社グループのこれまでのダイバーシティ関連の取り組みの紹介とともに、各拠点での実際の課題感や社員の声をヒアリングしました。これまで見えていなかった各拠点ならではの課題や、働く中で感じる課題など、生の声の抽出につながり、今後各拠点の推進委員と連携してDE&Iを推進していく足がかりとなりました。
LGBTQ(SOGI)への理解と対応
2022年6月にパートナーシップ制度を導入し、これまで法律上の配偶者のみに適用していた、慶弔や育児・介護、転勤や海外赴任に関する社内制度や福利厚生について、事実婚および同性パートナーへ拡大しました。
2023年6月のPRIDE月間では、PRIDE仕様にした当社グループのパワーポイントとWEBのテンプレートを社員へ配布し、アライ(ALLY)の輪を広げる活動を行いました。10月には、2020年に公開した「LGBTQ+への理解と対応」を大幅に刷新し、LGBTQ+への理解促進に向けたセクシャリティやLGBTQ+に関する基礎知識および当社グループでの制度や取り組みをまとめたガイドブックを公開しました。
また、関西レインボープライドへの協賛を行うなど、LGBTQ+を支援する継続的な取り組みが評価され2023年11月に職場におけるセクシュアル・マイノリティへの取り組みを評価する指標のPRIDE指標で「ゴールド」に継続認定されました。
婚姻の平等を推進する「Business forMarriage Equality 」に賛同
- 2024年7月27日時点で533の企業・団体が婚姻の平等(同性婚の法制化)への賛同を表明しています
多様な社員が活躍する職場づくり
シニア世代の活躍推進
生涯現役社会において社員一人ひとりが役割を発揮し続けることを目的に、2018年9月より、国内の正社員を対象に定年年齢を63歳から65歳へ延長しました。キャリア形成の支援策として、働きがいの継続につながるキャリア教育や、シニア世代に配慮した職場環境の整備、健康増進などにも取り組んでいます。
障がい者の活躍推進
artience(株)は、定期的に特別支援学校の生徒の就業実習を行っており、障がい者の長期的な就労の実現に向けて取り組んでいます。2019年より、知的障がい者の雇用を始め、グループ総務部十条センター内の「クローバーサポートセンター」にて、名刺作成、メール便の集配、書類の電子化、データ入力、会議室など共有スペースの消毒作業など、主にオフィスでのサポート業務を担当しています。2023年には十条センター以外への職場拡大も見据え、本社で初めてインターン生の受け入れを行いました。国内の障がい者雇用率は、
2023年度2.74%です。
2024年1月、障がい者の雇用をさらに促進するため、特例子会社の認定を目指したクローバー・ビズ株式会社※を設立し、4月には2023年に受け入れたインターン生のうち2名が入社しました。今後も雇用の拡大を進め、多様な人材が活躍できる機会の創出に取り組んでいきます。
- 新会社クローバー・ビズの「クローバー」は幸せを運ぶ4つ葉のクローバーをイメージし、サポートセンター設立時に社員の提案により名付けました
外国籍社員の活躍推進
国内においては、外国籍の社員(約30名)が語学力やグローバルな感覚を活かしてさまざまな部署で活躍しています。
地域の宗教の配慮
当社グループは、地域の宗教に配慮してグローバル展開を進めています。イスラム圏では、Halal(ハラル)認証の取得を進め、イスラム法の食事規程に対応したパッケージ製品などを提供しています。また、イスラム教徒のために工場内にMusholla(ムショラ)という礼拝場所を設置、断食月(ラマダン)への対応も図っています。
PT. TOYO INK INDONESIA(インドネシア)では、インドネシアの文化を尊重し、福利厚生の一環としてモスク(礼拝堂)を建設しました。モスクは近隣の会社の従業員や地域住民にも開放しています。