artienceの強み|統合レポート2024 積極投資で切り開く 新規事業の市場戦略

2024年6月28日 公開

本ページはAIを用いて翻訳しています。

artienceグループのリチウムイオン電池(LiB)正極材用導電カーボンナノチューブ(CNT)分散体は、LiBの高容量化・高出力化を可能にするキーマテリアルです。
成長市場である電気自動車(EV)普及促進の一翼を担う重要な製品であり、グループの成長を牽引する戦略的重点事業として、取り組みを強化しています。
トーヨーカラー株式会社 機能材料営業部 部長 小畑 晃司
トーヨーカラー株式会社 機能材料営業部 部長 
小畑 晃司

印刷インキ用顔料からCNT分散体へと発展

車載用のLiB に用いられるCNT分散体を支える技術は、もとをたどると印刷インキの顔料分散技術が基礎となっています。
新聞の印刷にも使われているカーボンブラックという黒い顔料は、導電性が高いという特長があり、カセットテープやVHSテープなどの記録材塗料(帯電防止用塗料)としても活用されてきました。この技術を発展させたカーボンブラック分散体は、ハイブリッド車のLiB用導電助剤として2015年に初めて採用されました。

しかし、カーボンブラックは分散が難しい素材ではないため、独自性を打ち出すには弱い面がありました。その頃、マーケティング活動の中で、中国ではLiBの導電助剤としてCNTを使用し始めていることを知り、当社でもCNT分散体の開発に着手しました。CNTはカーボンブラックと比較して、少量添加で機能を発現する、LiBの性能向上に貢献する素材です。一方で分散が非常に難しく、実用化には大きな壁がありました。製品化には、創業時から磨き続けた当社の高い分散技術が大きく貢献しています。
2019年の採用を皮切りに、当社のLiB正極材用導電CNT分散体は大手LiBメーカーでの採用が相次いで決まっています。2024年2月にはトヨタ製ハイブリッド車向けとして、プライムアースEVエナジー社に採用されました。CNT分散体がLiB正極材用導電助剤として採用されるのは、日本国内製の量産車種向けとしてはこれが初となります。

売上と世界シェア推移・目標
売上と世界シェア推移・目標
  • シェアは車載用LiB容量(GWh)総需要に占める割合

技術、分散剤、生産プロセスの最適化が強み

我々はCNTの分散技術を持っているだけでなく、分散剤を自社開発しており、生産プロセスでも高いレベルを実現しています。分散技術と分散剤の開発・改良、生産プロセスの最適化の3点が我々の強みです。
LiBの安全性において、一番重要なのは金属の異物を混入させないことです。CNT分散体に金属の異物が混入すると、バッテリーの正極と負極がショートして発火や発熱といったリスクを増大させるからです。異物混入などに対する要望のレベルはお客様ごとに異なりますので、お客様と徹底したすり合わせを行い、要求される品質をクリアできる体制を構築しています。
CNTの分散技術に加え、顧客のニーズに合わせてカスタマイズすること、品質管理体制や品質保証体制の整備を徹底することで、 お客様からの信頼を得て現在の拡販につながっていると考えています。

政治的リスクがあってもEV化の潮流は変わらない

LiB用CNT分散体は現在、アメリカ、ハンガリー、中国、日本の4カ国で生産を行っています。2023年度にはアメリカに2カ所目の生産拠点を設立しました。アメリカ最初のLiB生産拠点であるジョージア州の現地法人LioChemは1980年代からプラスチック用着色剤やグラビアインキをメインとして生産活動を続けてきた拠点です。現在、John Easley氏が社長を務めていますが、新拠点設立にあたって人材の確保や投資に向けたやり取り、現地での助成金の交渉など、主体性を持って我々のビジネスを支援してくれています。
国によっては政府の方針などにより、CO2削減への姿勢ががらりと変わるなど、政治的なリスクがあるかもしれません。しかし、グローバルで見るとCO2削減への方針は共通認識であり、EV化の流れは変わらないでしょう。一時的に停滞することがあっても、右肩上がりの基調は続くものと思います。

4極5拠点の生産体制

投資を増額し、2030年度世界シェア20%を目指す

2030年度におけるLiB用CNT分散体の世界シェア20%(車載用LiB容量の総需要に占める割合)を目標として打ち
出しています。自動車業界は開発スパンが長いこともあり、我々は現在、中期経営計画artience2027のさらにその先を見据えたビジネスに取り組んでいます。
世界的な脱炭素の潮流により、自動車のEV化は急速に進んでいます。LiBの世界市場は、2030年には2020年に比べて5~10倍となり、さらに拡大すると予測されています。2023年後半からEV市場拡大のスピードが減速していますが、これは一時的なものであり、今後も右肩上がりに推移していくことは間違いないと考えています。2030年度に世界シェア20%という目標は、無理なく達成できる数字であると思っています。

また、その実現のために、投資計画(累積)を250億円超から490億円超へと増額しました。当社グループとしては、1事業への投資額としてはこれまでにない規模の投資になります。その過程で、設備投資資金として、日本政策投資銀行から総額150億円を調達することができました。当社の戦略をしっかりと分析し判断をいただいたと考えています。

当事業に関する投資計画の累計(2019年~)

当事業に関する投資計画の累計(2019年~)

CNT分散体を通じて「感性価値」を創造する

我々が行っているのはBtoBのビジネスなので、我々の製品を一般消費者が直接手に取ることはありません。ですが、我々が提供するCNT分散体の機能によって、EVの航続距離が長くなったり、急速充電性能が向上することで、生活者の方に驚きや感動を覚えていただけるよう、直接のお客様であるバッテリーメーカー、自動車メーカーとしっかりと連携していきたいと思っています。
直接のお客様との協業を通じてマーケットにさまざまな価値を提案することで、我々の企業価値も上がっていくと考えています。最終製品を手にとる生活者の方の感性に訴えていくような価値を提供していくことを意識しながら、これからも事業活動に取り組んでいきます。

統合レポート

リチウムイオン電池用材料