基礎編#07 「色の見え方」
色は条件や状態によって、様々な見え方の変化をする性質を持っています。色を測るというテーマの中で取り上げたように、数値と色の感じ方の差の為に戸惑うこともしばしばです。見え方が変わってしまう法則を覚えておいて、日常生活に役立てると良いのではないでしょうか。
自然の風景の色
太陽光は空気中の微粒子にぶつかり散乱して眼に入ってきます。その際に、波長の短い青い光のほうが強く散乱されるため、空は青く見えてきます。遠くの緑の島々が青く見えているのも同様な効果でしょう。近くの植物が遠くなるにつれ、黄緑から緑、青緑、青と色相をグラデ―ション的に変化していくのを見るとき、思わず「きれい」や「素晴らしい風景の拡がり」「のどかな叙情感」などの気分が込み上げてきた経験があるのではないでしょうか。このような景色を見る機会の積み重ねから、「グラデーション」的変化は心が落ち着く色使いとして、好まれやすいといえましょう。
隣り合わせの色の影響 対比効果
色は隣り合わせや周辺の色の影響で、違った色に見えてきます。
下記の花のイラストの中心の色は全て同じ色です。
色相対比
上の2組は、花弁の色が赤系の場合は黄色みを帯び、黄系の場合は赤みを帯びて見えるという変化が見られます。これを色相対比といいます。
明度対比
上の3組は、周辺が鮮やかな場合と灰みを帯びた場合の違いです。鮮やかな色に囲まれていると、くすんで見えますし、グレーっぽい色の場合は彩度があがって少し鮮やかに見えてきます。彩度対比と言われます。
洋服の色が似合う似合わないという判断をする時、この対比による肌の見え方の変化が影響を与えている場合が多くあります。顔の近くに派手な色や明るい色など、様々な色を直接当ててみると分かりやすいでしょう。上衣の色をすっかり変えなくてもマフラーやスカーフ、襟の色などに配慮するだけでも効果が得られるで試してみたら如何でしょうか。
これらを対比効果といいます。
要素が多くなっても同じような効果を得られます。下記の緑の色を観察して下さい。左の図は青の背景のうえの緑です。やや黄緑に感じられませんか。右の図は黄色の背景での緑です。緑が青っぽくなって見えていることでしょう。
同化現象
赤いネットに入ったミカン類を見たことがあるでしょうか。最近は減っているので経験がない方もいるかもしれません。赤いネットに入ったミカンは、実際よりも赤く熟したような色に見え、甘みを増したようにも感じます。店頭での色のマジックを楽しんで買い物をしていただきたいと思います。
このような変化で食材の色を鮮度良く見せて、食欲を増進させるという効果も改めて「食育」の場面で注目されています。
面積効果
面積を変化させると、色の見え方も変わってきます。
建物の色や壁の色など、大きめの面積の計画をする際に、小さな色見本で選択すると、しばしば思ったより強い彩度になったり、明るすぎたりなどビックリする場合もあります。
色を見慣れている人はお分かりになるでしょうが、一般的に白い背景で明度の低い色を視ると即座にはわかりにくいと思います。下の方に大きく表示したものを掲載してみましたので確認してみて下さい。
できれば大きな見本や試し塗りなどで確認することをお勧めしていますが、実際はなかなか取り組めていないようです。改修などで外壁を一部塗り替えなどした場合に継ぎ接ぎ状態になってしまって、折角きれいにできる予定だったのに残念な事態を引き起こしている事例を見かけたりします。色の多少のずれは、安っぽく見える一因になりやすいため、できれば細心の配慮を期待したいところです。
暗い色は、大きくすると明度アップと彩度アップ両方の変化を感じます。
その他、明度や彩度の様子で、見えが変わる傾向を挙げてみましょう。
できるだけ大きめの色見本をつくり、確認することをお勧めします。
膨張色と縮小色
色によって太って見えるとか痩せて見えるとか、女性誌でよく取り上げられていましたが、まあ本当と言っていいでしょう。下図の棒は同じ太さですが、明るい色のほうが太く見えます。プロダクト製品で検討用に模型を作る際に、黒と白を作成すると、白は膨張して場所ふさぎのような印象に見えたことがあります。図の上だけでなく現実のものでも見え方が変化します。でも、またこれも不思議ですが、選択の段階では、きゅっと締まってシャープに見える方を選択する人と少し拡大して見える方を選ぶ人がいます。ここでは、人の好みの傾向の違いが影響しているわけです。
また、膨張してみえることを避けるばかりでなく、大きく膨張してみえるというのを利用して、メリハリボディの強調という見せ方も考えられます。
いくつか、良く知られた簡単な色の変化の事例をあげてみました。色の面白さの一つは、この背景や周辺との関係で変化することといえましょう。是非、色の見え方の変化を上手く利用して、魅力をつくりだしていただきたいと思います。
2017年05月30日
Text by 日本カラーデザイン研究所