基礎編#04 色のイメージを使いこなすツール / カラーイメージスケール
十人十色という言葉は、よくご存知のように、考え・好み・性質などが人によってそれぞれ違うことを示しています。まさに色の好みは様々で、好きな色を10色選んでもらうワークショップを行なうと、全く同じパターンはないように見えます。そのため「色に対する評価は主観的なものだ」と結論付ける方も多く見受けます。
ところが、一見、色の好き好きはバラバラに見えても、整理してみると、明るい色好みであったり、あざやかな色好みというように、嗜好でも共通項があるという側面を見出すことができます。また、色を見た時に感じる印象効果は、多くの人が同じような観点で捉えていることも分かっています。見たり触ったり、手に取ったりという五感での経験や学習を積み重ねた結果として、色を見た時に、同じような印象を感じる部分があるということでしょう。
そんな色の持つ基本的なイメージを知って、色を使いこなしましょう。
一つ一つの色が持つ意味(イメージ)をあきらかにし、各色を相互に関連付けて比較判断できるように開発されたのがカラーイメージスケールです。全ての色が、ウォーム(warm)かクール(cool)か、ソフト(soft)かハード(hard)か、クリア(clear)かグレイッシュ(grayish)か、の3つの心理軸からなるイメージ空間に位置づけられています。
- イメージスケール二次元タイプか3次元タイプ掲載、掲載のタイプに合わせて文章訂正あり
このスケール上で距離の離れている色ほどイメージの違いは大きいです。反対に距離の近い色は互いにイメージが似ているといえましょう。
彩度の高い色は、横軸に沿って大きく拡がっています。これは、鮮やかな色はその色相の違いで、大いにイメージを変化させるということを示しています。それに比べて、黒に近いような暗い色は、ハードの方向性に集中していることが見てとれますが、ハードな印象という面が強く、色相による違いはあまり認識されていないということです。すなわち暗い色であれば、赤系でもブルー系どもある程度同じような重厚感や格式感などが表現しやすいとも言えましょう。
このスケールは、形容詞のイメージ、配色のイメージと関連付けられて開発されてきました。例えば、それぞれ形容詞の内容を表現する単一の色や、配色はどんなものかというと、イメージスケールの同じ位置にある色や配色です。逆に、色の組み合わせによって、それがどんな印象で人に伝わるかというと、その配色に似たものの位置にある形容詞を探せばいいわけです。
この言語スケールを用いると、コンセプトの整理にも役立ちます。
「今回のニューモデルは伝統を重んじ、人と人とのつながりの温かさを目指して、先進性を高めました」
こんなコンセプトで何かデザインやカラーを考えるとしたら、なかなか大変です。このままでは、伝統感を感じさせる色、温かみを感じさせる色、先進性を感じさせる色どれを優先させたらいいのかわかりにくいですね。こんなコンセプトは普通つくらないだろうとお考えかもしれませんが、意外にあれもこれもと盛り沢山のコンセプトは多いものです。
でも困ることはありません。もう一度、イメージスケールに掲載された形容詞を使って、複数の形容詞に置き換えて考えるようにしてみると、どこに重点を置いて考えたのか共通認識されている部分が明確になってきます。
人の意見は、それぞれです。しかし、共通認識できる部分はあるでしょう。イメージスケールは、その様な様々な意見を取りまとめるのに役立ちます。また、配色を見て、その内容や質、発信している情報を読み取れる道具でもあるのです。
簡単な事例として、ビジネスマンの胸元、Vゾーンの着こなしの色によるイメージスケールを紹介します。こんなところにも、色によるコミュニケーションの力を活かせるのです。ここに上げた配色だけがこのイメージということではありませんが、このスケールを参考にして、あかるく柔らかなブルー系の濃淡を用いるとクリアな清潔感を感じさせるであるとか、パープルやピンク系のネクタイを取り入れるとエレガントで優しい印象をつくれるというように、基本の法則をつかんで、応用していっていただきたいものです。もちろん、ご自分のキャラクターイメージとのバランスを考えながら取り入れて下さい。
「心を伝える配色イメージ」2008年講談社(一部修正あり)
参考図書:「カラーイメージスケール改訂版」2001講談社、「カラーシステム」1999講談社
2015年08月31日
Text by 日本カラーデザイン研究所