応用編#06 色彩と五感 その3 聴覚

心地よい音

かなり以前の調査の結果ですが、「小川のせせらぎの音」が気持ちの良い音の1位になりました。五感と色を探る一環として、音についても、色やイメージでとらえてみる試みをしています。この調査は、言語で表現した選択肢から回答する方式をとっています。「小川」といった身近なサイズの印象や「せせらぎ」というような爽やかさを感じる表現が快さにつながるのでしょう。

また、人が心地よさを感じる自然の現象や事物には、感性工学で話題になった1/fゆらぎが含まれていて、この「せせらぎの音」は代表的なものだということだそうです。「規則的」なものと「不規則的」なものが調和した状態を1/fゆらぎということです。リラックスや癒しに効果があるということがわかっており、自然の中を歩くと効果があると推奨もされています。

川が流れているような場所は、住むとしても快適ですし、気持ちの良い散歩道がある観光地としても人気となりやすい場所といえるでしょう。

岩手県盛岡市 イメージ画像
小川というのには少し大きめですが、のどかな河原が広がり、ゆったりとした水音が聞こえてくるようです。
地域の人々に親しまれている様子が伝わってきます。
岩手県盛岡市
宮城県大崎市 イメージ画像
古いお屋敷の脇を流れる川は、ゆったりと曲がっていて、伸びやかさを感じます。 宮城県大崎市

色で考える心地よい音と心地よくない音

単色のサンプルから心地よい音と不快な音を回答してもらった事例をみてみましょう。
これは、「色・五感・心理などに関するイメージ調査-東北芸術工科大学」2013年 久保田力、渡部聡、杉山朗子による結果から引用しました。(回答に用いたカラーサンプルは28色の代表的な色相とトーンで構成した表です。)

まずは、心地よいと感じる音です。明るいトーンのブルー系やブルーグリーン系が選ばれています。また、Y系の明るいトーンのクリーム色のような色もあがってきています。前述したような小川のせせらぎを連想させるような色といえるでしょう。

耳で聞いて心地よいと感じる音を色に例えるとの図

一方、心地よくない音を表現した色とは、黒、茶色といった暗いトーンの色が男女共通で上位を占めています。女性は、赤を不快な音の色として挙げていますが、男性はそれほどでもありません。音に関しては男女での評価はやや異なっているようです。女性は鮮やかなトーンの黄色や紫も不快だとしているのが特徴といえるでしょうか。

耳で聞いて心地よくないと感じる音を色に例えるとの図

この心地よくない音のイメージの色は、激しい交通量の都市の状況や、工事現場の騒音などが連想されるのではないでしょうか。

音のイメージ

音をイメージとしてとらえた図を示してみましょう。様々な自然の音、人工的な音を擬音のように表現し、色に置き換えて、カラーイメージスケールのポジションに置いたものです。

音をイメージとしてとらえた図

イメージ分布の特徴

イメージ分布の特徴の図

音のイメージスケールの補助軸

音のイメージスケールの補助軸の図

心地よい音は、科学的にも研究されて、ネーミングなどの際にも利用されていますが、方向性などを考える際には、色を指標に使うという方法も手軽でお勧めしたいと思います。

2019年03月04日

Text by 日本カラーデザイン研究所