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project.03

新規事業創出と
挑戦の風土醸成をめざす

社会変化が加速し、不確実性が高まる時代において、新たなビジネスの創出は多くの企業に共通する経営課題となっています。artienceでは挑戦する風土醸成のため、社内から広く新規事業のアイディアを募り、事業化を支援するビジネスアイディアコンテスト(ビジコン)を開催しています。どのような経緯からビジコンが始まったのか、社内ではどのような変化が生まれつつあるのか、ビジコンの立ち上げや企画運営、事業化支援に携わる2名の対談をお届けします。

project member

  • K.N

    K.N

    artience株式会社
    グループ経営部

  • H.T

    H.T

    artience株式会社
    インキュベーションセンター

session.1 新規事業創出に向け、
毎年進化を続けるビジネスアイディアコンテスト

ビジネスアイディアコンテストは2021年度に3カ年計画で始まりました。私はその立ち上げメンバーとしてビジコン制度の企画や設計を行い、開始後は事務局・審査員として運営や過去受賞テーマの事業化をサポートしています。

私はもともとトーヨーケム㈱の技術部門で開発業務を行っていましたが、今は2023年1月に発足した「インキュベーションセンター」で新規事業創出をミッションとして活動しています。3回目となる2023年度のビジコンからは、我々インキュベーションセンターも事務局や社内メンターとして参加しています。そもそもビジコンはどのような経緯から始まったのでしょうか。

新規事業創出は長年にわたる課題で、ビジコンのような事業提案制度が必要だということは以前から社内で言われていました。ビジコンが始まる前年に挙手制の新規事業プロジェクトがあったのですが、その時に多くの社員から応募があり、「新しいビジネスを作りたい」という想いを持った社員が多くいると確信できたことから、グループ人事部とグループ経営部でビジコンを立ち上げることになりました。

とはいえ、当時は社内公募型の提案制度そのものがなく、ゼロから制度を設計するのは相当大変だったと思います。

はい。初めて、かつ完全に自前での開催だったので、すべてが手探りでした。初年度は走りながら課題をクリアしていった感覚で、1年目の課題を2年目に生かし制度を変化させていきました。

1回目、2回目のビジコンを通じて、一部の社員の心に火がつきはじめたのは私も傍から見て感じていました。3回目からは制度としても大きく進化しましたね。

はい。制度面での大きな変化は、ビジネスアイディアの事業化をより本格化させるために、審査段階でステージゲート法を取り入れたことです。ステージゲート法というのは、アイディア創出から事業化までを複数のステージに分け、要件をクリアするごとに次のステージに進んでいくという方法です。また、アイディアのブラッシュアップには、新規事業創出支援を行う外部企業の伴走サービスも入れて、サポート面の強化も行いました。

それまでは練り込まれた企画書で「一発勝負」だったものが、エントリーシート1枚で応募できるようになり、気軽にトライできるようになったわけですね。過去のアンケートによると企画書を作ること自体のハードルが高く、諦めてしまう人も多かったようですが、3回目からは応募数も増えました。運営側としても、企画書の段階での実現可能性よりも、応募者の想いの強さや解決したい課題の重要性にフォーカスして選考できるようになりましたよね。

session.2 社員一人ひとりの心に
火がつき始めている

1回目、2回目のビジコンは、もともとやる気に燃えていた人のアイディアが上がってきていた印象です。裾野が広がった3回目からは、既に大きく燃えている火ばかりでなく、まだくすぶっているような小さな火も増えてきて、新規事業創出の風土が確実に広がっている印象があります。

そうですね。個人的に嬉しかったのが、ビジコンを実施した後、artienceのいろいろな事業会社で「ミニビジコン」のようなものが自発的に始まったことです。いろいろなところで火がつき始めている、というのはその通りだと思います。

私が個人的に印象深かったのは、「新しい取り組みは若い人がやるもの」という固定概念が覆されたことでした。蓋を開けると、管理職やベテラン社員からの応募も多くて、新規事業は誰もが挑戦できるものなんだ、という考えが浸透してきたように思います。

とはいえ、「新規事業は自分には関係ない」と思っている人は、まだまだ多いと思います。新規事業創出の風土を醸成していく上で大切なことは、新規事業は特別なことではなく、誰もができることなんだというマインドに変化させていくことだと考えています。

そうですね。マインドを変化させるための方法として、今年は外部の企業を招いて新規事業創出の風土醸成セミナーを数回に渡り開催しています。動画はアーカイブ化して、できるだけ多くの社員に見てもらえるよう、呼びかけています。

セミナーを見て、自分もやってみようと思った人は多いでしょうね。ですが、新規事業創出を加速させる一番の要因は、なんといっても事業化の事例を作ることだと思います。自分の考えたビジネスアイディアが本当に支援されて、事業化されるのか、多くの人が気にかけています。事業化を実現して活躍している人の姿を見て、「自分もああなりたい」と思ってもらいたいです。

規模の大小に関わらず、ビジネスアイディアの提案者が事業責任者になったり、あるいはカーブアウトして新しい会社を作ったり。そんな姿を見てもらうのが、一番効果があるのは間違いないですよね。ビジコン発のシステムが既に社内に導入された例もありますが、事業化の事例は必ず作っていきたいですね。

session.3 自発的にビジネスのアイディアが
具現化されていく組織をめざして

私はR&Dの出身で、新しい技術を作っていく立場にいました。ですが当時、新しいビジネスアイディアを考えても、なかなかブラッシュアップできる機会や実現するためのノウハウもなくて。ビジコンを通じて、社員のアイディアを具現化できる仕組みを作れたのは良かったと思います。私自身もビジコンに応募していますし、毎年、どんなアイディアに出会えるのだろうとワクワクしています。

私は事業会社の開発部門で既存事業に関わっていた期間が長かったのですが、新規事業に携わるようになり、今までとは違う視点で新しいことに挑戦する楽しさを知りました。

新規事業も既存事業もそれぞれにやりがいがありますが、「自分発」のやりがいを作れるのは新規事業ならではですよね。インキュベーションセンターでも新規事業に携わっているH.Tさんからのアドバイスとして、新規事業を生み出すための「コツ」はありますか?

新規事業を生み出すためには、年齢に関わらず、普段からいろいろな新しいことに挑戦することが大切だと思います。既存事業か新規事業かに関わらず、毎日同じ生活をして、同じ仕事をしていると、なかなか新しいアイディアは生まれてきません。普段と違う道を歩いてみるなど、小さなことでもいいから、毎日何か違うことをやってみることが大切なのではないかと思っています。

日々の業務でも何か新しいことを取り入れてみるということですね。たしかにビジコン自体も毎年同じやり方を続けているとマンネリ化してしまうので、進化を続けることが必要だと感じています。

挑戦する風土を醸成し、新規事業を生み出し続けられる組織にするためには、「既存事業ももちろん大切だし、新規事業も当然やっていく必要があるよね」という人を増やしていくことだと思います。ビジコンに応募するところまではいかなくても、少なくとも挑戦に対して前向きに受け止めてくれる人がより一層増えていけば、新規事業と既存事業がお互いリスペクトし合い、補完し合ってシナジーを創出するような関係性も生まれてくるはずです。

まさに「挑戦する風土」が隅々まで行き渡った組織の姿ですね。究極的には、ビジコンという場がなくても自発的にアイディアが生まれて具体化されるようになる状態が理想だと考えています。そのためにも、ビジコンを通じた新規事業創出という形で実を結び、新規事業が生まれ続けているような組織に変えていきたいです。

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